スイコウBLOG
2021年12月14日

外壁のクラック(ひび割れ・亀裂)、その原因とは

「罅」という漢字があらわれても、通常なかなか読めませんね。

『罅われ』と書かれているものを、前後の文脈から予測して読むことは出来ても、ほぼ「罅」と表記することもないでしょう。

「罅=ひび」通常建築においてはクラック=Crackと呼びます。以下理解しやすく「クラック」「ひび」とします。

私の感覚では、建築における「ひび割れ」とは建物がしていることのように感じます。

歔欷という漢語的表現も何やら難しく理解しにくいですね。歔欷とは「人がすすり泣く」ということです。つまり、建物においてクラックは建物のすすり泣きとも云えます。

放置しておきますと、やがては真の大泣きとなり、取り返しのつかない結果をもたらすことになりかねません。要は建物が危険信号を発していると云えます。

クラックを発見したら、人が行う健康診断と同じく、「建物の健康診断をする時期が来た!」と、考えてよいと思います。

クラックは建物が健康診断を求めているサインです。建物の健康寿命を延ばすためにも、専門的チェックをお勧めいたします。

ひび割れ(クラック)の部位と仕上げ材による現象と種類

モルタルとは、砂とセメントと水を練り混ぜて作る建築材料です。

セメントと砂の重量比1:2~3の割合で調合されたもので、伸縮性が大きいため基本的に構造材として用いません。

かつては日本の住宅の殆どが外壁材として使用していたことがあります。しかし施工が複雑であり、施工の日数がかかり、「仕上げ工事」も必要なため、最近は施工例が少なくなっています。手間がかかる分価格も高いです。

また、近年モルタル仕上げで外壁仕上げをする場合は、高コストですが本来の「湿式工法」より「乾式工法化」が主流となっています。

湿式のモルタル仕上げをする場合は、ダメージのクラックではなく、乾燥収縮による「ヘアクラック」が入るため、スタッコ(化粧漆喰)等の仕上げを行うこととなっています。

モルタル壁の長所としては、防火性能が高いことがあげられます。

モルタル仕上げのクラック発生箇所と対応

クラックは窓廻りに多く発生します。原因としては雨水等の侵入があります。

クラックのなかでも、肌割れ(表面割れ)的な現象は構造的には殆ど問題はありませんが、下木材の収縮等によるクラックには精密なチェックの必要があります。

外壁のクラックが表面的なものか、手当が必要なものかはなかなか一般の方には見分けはつきません。外壁にクラックを見つけましたら、早めにご相談くださいませ。

ひび割れ=クラックについての考察・クラックの現象について

現象は2種類に分けられます。構造上のクラックと、異種材による収縮率の相異によるクラックです。

特に木構造に於いては、構造体の木と種々の仕上げ材の収縮率の相異があり、クラックを防ぐことは難しく如何ともし難い問題でもあります。

防止方法としてエキスパンションジョイント継手の部分(継目)にあそび(逃げ)を設ける。又は一定部分で伸縮が止まる方法を設けることです。

構造上の条件を起因とするクラックありますが、根本原因を明確にしなければ、補修改善は難しいものです。

万が一の場合のクラックの原因追及をするため、建物を購入する際には構造関係図書を施工者または設計者に求めておいてください。今現在の建物をなるべく永く持続するためにも。

 

クラックの種類

乾燥収縮によるクラック

湿式工法のモルタル仕上げの場合に発生します。モルタルは通常2回塗り程度施工し、吹付け等の仕上げを行います。湿式工法は、下塗り仕上げ、下地塗りとも乾燥期間を経た上で最終的に塗り上げます。

塗ってから1週間程度乾燥させ、クラックが発生した上で塗り上げていきます。

事前にクラックを発生させる事により、竣工後のクラック発生を抑える効果があります。

モルタル壁の最大の特徴は、継目が無くコーキングジョイトの必要がないため仕上がりが美しいですが、問題は経年劣化によるクラックが発生しやすいこととなります。

 

モルタル下地仕上げに於けるクラック対処法

リシン、スタッコ、吹付けタイル、左官仕上げ等で対処する。

ヘアクラック

構造的に問題は殆どありません。但し、メンテナンスのための補修塗装の必要があります。

構造クラックやヘアクラックより大きいもの(雨水の侵入がありそうな0.3㎜以上のクラック)その他、目視して気になるクラック

雨水の侵入等により内部の腐食、錆、蟻害等の虞れがありますので、早めの補修工事をお勧めします。

補修法としては、コーキング等で防水処置をした上でクラック面を重鎮し、乾燥後あらためて仕上げをします。

※重鎮とはコンクリートなどの隙間や穴に詰めて埋めること重ねて申し上げますと、クラックのなかでも決して構造クラックと思われるものは放置しないですぐにご連絡をください。

早めの対応で大事に至らないようにしましょう。

その他の外壁仕上げ材のクラック

湿式工法、左官工事後のクラックとは、モルタル下地に発生する乾燥収縮によるものです。そしてクラックの殆どがヘアクラックです。

一方の構造クラックは、建物の構造的欠陥、凍結融解の繰り返し、他の建物の不同沈下等によるものです。

また、筋交い(柱と柱の間に斜めにいれて柱の補強をする部材の事)等の耐力壁不足により外壁が歪み発生した場合にも生じます。

万が一、地震等の力が生じた場合には、外壁状況をチェックする事が肝要です。対策としては構造補強をしない限り、今後ともクラックが同じ箇所に発生しやすく、広がっていくと考えられます。

簡易的対処方としては、クラック部分を広めにカットし、目地を作り、シーリングを充填して今後のクラックの広がりを防止しますが、それは構造にひずみがある場合は根本的な対処にはなりません。

縁切りによるクラック

塗装を部分的に塗り直したり、中断したりと、乾燥状態が異なるモルタル仕上げ等の場合に生じやすいです。

乾燥の進み具合に差があるために時間が経過すると肌あれ状態のクラックが発生します。処理方法としては、大概構造クラック処理と同様です。

 

モルタルについて

元来日本に於いては漆喰・土壁仕様により防災上の対策として伝統工法にて施工されておりましたが、費用の面からみても、セメント材料の方が安く済むようになり、今に普及しております。

漆喰・土壁工法の特性として、土壁部分(内部)の保水性が保たれ防火構造上、モルタル仕上げより防火対応時間が長く、機能上は優れた仕上げと言えます。昔の蔵等は原則漆喰塗り込めにて造作されております。

因みにモルタル仕上げが推奨されたのは、旧陸軍省による建物防火規定で仕様が定められた時からとされています。

おそらく、目的としては空襲などによる延焼防止が考えられていたのではないかと思います。

 

その他のクラックについて

金属系外壁及びケイカル板等のサイディング仕上げに於いては、殆どクラックは生じる事はありません。

但し万が一生じる様な場合、破断若しくは歪み等が考えられます。原因としては取付け下地の不良、又は構造上に問題がある事が考えられます。

又、ケイカル板等窯業系サイディングの場合、割れ脱落などが考えられます。割れの場合は地震や雨漏りなどによる下地等の腐食により割れ又は脱落の場合もあり得ます。

サイディング貼り等のクラックについては、下地構造取付け方法に多分に不備があると考えられます。いずれにしても当然ながら雨漏りしない家造りが肝要と云えます。

RC造(鉄筋によって補強されたコンクリート造の事)のクラックについて述べます。構造的に引張力に対しては、鉄筋が負担した圧縮力にはコンクリートが対応します。

コンクリートと鉄筋は相性が良く、相方の欠点を補完する関係になっており、耐震耐火性能に秀でています。又耐用年数も長く、一般的に資産的価値が高いです。

但し、熱伝導率が木材に比べて高い為、RC構造の初期には、暑い季節には暑く、寒い季節には寒いとの短所もありましたが、今では進化した断熱等の処置もされ、特段に寒暖対策を考えることはなくなりました。

ただデメリットもあり、RC造は気密性が高い為、コンクリート内部の水分が抜け難く内部結露及びカビ等が発生しやすい場合があります。

コンクリートのクラックには、モルタル同様に乾燥収縮によるヘアクラック等が生じる事があります。

特に高強度のコンクリートの発生が多いという事と、気温によるコンクリートの打設時期によってもクラックの発生頻度が違います。

コンクリートは気温が高いほど硬化速度が速く、強度も高くなる傾向にあり、温度状態にも留意しなければなりません。特にコンクリートを打ち継ぎ時のコールドジョイント部分からクラックが発生するおそれがあるので、一体的に打設の段取りをしなければなりません。

またRC造のクラックはコンクリートの中性化により、鉄筋の錆びの発生(酸化)でコンクリートのクラック及び剥落を生じさせ、コンクリート寿命の低下、耐用年数の減少をおこします。

鉄筋はコンクリートのアルカリ性により保護されているため、クラックは鉄筋を酸化させるダメージとなるのです。

補修方法についてはかなり専門的になりますので省略しますが、おおむねモルタル補修に準じます。

RC造のクラックの場合、やがては重大な事象として発生するかもしれませんので、常にメンテナンスを考えてください。

 

内部クラックについて

天井(木下地)の場合、木材の乾燥収縮による天井材の浮き剥がれがクラックの原因の大部分であり、補修としては下地の縁より補修の必要があります。

壁(木下地)の場合、天井と同様ですが仕上げ下地の貼り方に注意すべきです。

石膏ボード、合板等の場合、クロス(十字)継手をしない施工をする事です。

 

 


クラックは、冒頭に記した事のように「建物のすすり泣き」と考え、発見し次第専門家にチェックを依頼することが必要です。

建物健康寿命の長期化のために、又美しい健康建物であるためにも、小さなクラック、気になるクラックを見つけられた際には、お気軽にお問合せくださいませ。