スイコウBLOG
2022年06月27日

リフォームで窓を大きく!より良い住まいの環境デザインへ

窓の歴史的概念

現在の日本人にとっての窓とは、単純にサッシ及び硝子戸という開口部と思われているが、元来我が国において窓と呼ばれる概念は認識されていなかったと考えられる。
窓といえば当たり前の事ではあるが、明り取りである。

歴史的に考えれば、多分平安時代に建築された寝殿造りにおいて窓と呼ばれる概念は見当たらず、舞良戸(まいらど)等の開口部を開け閉めする事により、風通しや明かりを取っていた様である。

窓として表現されるのは、書院造りより明確に意識されるようになったのであろうと思われる。
書院とは現在でいう書斎の如きもので、いわゆる武家住宅として室町時代頃より成立したものである。
室町時代以前の鎌倉・平安時代に比べて農業及び商業の発達と生産性の増加により、人口も増加し、有閑階級等のいわば遊興人の人々による知的好奇心と遊び心による住まいに対する住宅様式の変化があり、その後庶民にとっても徐々に身近に感じられるようになった様である。

日本文化の数々の源流として、金閣・銀閣等の遊び心による建物の建築が、やがて数奇屋造りなど今現在に繋がる和風建築として脈々と受け継がれている。
今の日本の文化の源流は、大概室町足利花の御所よりの系譜であろう事は云うまでもない。

窓として認識されるのは、書院造りより始まる華灯窓

話は逸れましたが、窓として認識されるのは、書院造りより始まる華灯窓(かとうまど)<火灯窓・花頭窓などとも書かれる>等々による〝窓〟としての表現が始まりではないかと思われる。
この窓は、主に日本の寺社・城郭・住宅建築などに見られ上枠を花形や火炎形に造った特殊な窓である。窓の機能としては、風通しの窓(あな)と明り取りとしてある。
茶室等に設けられる下地窓(したじまど)等は純然たる窓本来の風通しと遊び心のデザインとして今でも多用されている。

現在の人にとっての窓とは硝子戸の事であり、基本的には障子・雨戸等の事を窓とは呼ばない。
硝子は歴史的には紀元前より作られていたようであるが、日本においては江戸時代中期に一般に知られるようになる。
代表的なのが江戸切子等の工芸品として知られ、高価なものであった。
現在の人たちが認識する、窓イコール硝子戸が普遍化されたのは昭和に入ってからと思われる。
もちろん明治時代には硝子窓の建具は住宅建築等に使用されていたが、高価なため、特別な邸宅やビル等に使用されていたようだ。

 

窓、本来の目的

しかし窓を開けるという意味はOPEN(オープン)にして風通しを良くする事であり、はめ込まれた硝子窓では、必ずしも窓本来の目的を表すものではないのではないか。
日本にとって窓という概念の認識は比較的新しいものと思っている。
日本における窓とは、開口部の事であり、雨戸障子等であり、純然たる窓とは言えない雨戸を明け、障子を明ける事が〝窓を明ける〟であって、〝開ける〟では無いと考えられる。
窓を開けるという事は硝子戸の事であり、硝子戸を多様化することにより、窓という存在が明らかになったのではないだろうか。
あくまで以上は個人の見解である事を追記しておく。

 

日本の窓と西洋の窓の違い

日本の窓と西洋の窓の在り方の違いは以前記した事もあるが、住宅におけるプランニング方法の違いがある。日本の場合のプランニングは、全体のサイズより分割する事により必然的に、窓イコール開口部があり、如何にして壁の存在を表現するかにある。
例えば、姫路城(別名を白鷺城)の美しさは、壁と開口部(窓とは言えない)のバランスの美しさにある。

西洋の建物の場合、使用目的により連結するプランニングであり、壁ありきの連結プランであるため、窓に対する美意識が注目され、数々の窓デザインが創り出され窓の構成による美を構築している。数種類の窓構成の連続性による美意識の発露がある。

 

結露と換気

また、日本における窓硝子の結露問題は、雨戸障子または戸板の時代には結露は無かったようである。
雨戸障子にしても吸湿性が高いため、循環性が高く発生しない。
窓硝子の場合浸透性0のため、温度差により結露が発生し、経年劣化を早める事となり、特に冬期における内部結露問題は、窓硝子戸の汎用により種々建築及び健康などに対して悪影響があると考えられる。
窓による解放快適感はより良くなったのではあるが、デメリットとして建築寿命の短期化を進める事にもなっている。

そして今ペアガラス窓の一般化により快適性と結露問題は改善されつつあるが、デメリットとしては換気に対する配慮がより重要となる。
窓の性能アップにより、室内の気密性が向上し、より新鮮な空気の取入れに対して計画換気の重要性が増している。
いわば機械換気(換気扇)による設備が必要不可欠となる。
住宅の場合、部屋毎または住宅全体に対する気積に対して1時間毎に0.5回以上の換気が必要とされている。
基準としてはホルムアルデヒド等のシックハウス症候群対策ではあるが、昨今の傾向としてはコロナ禍における新鮮な空気の循環がメインではないかと考えている。
空気を大切にしましょう。

窓における熱損失は10%~20%程度と考えられている。
また、窓の気密性及び開口面積によっても熱損失量は変化する。開口面積への配慮は重要となる。
日本には春夏秋冬の四季があり、窓に対する配慮は春夏秋冬に対応可能な敷地環境条件により、窓の在り方を考えることが最も重要な事であり、窓は環境により設定しなければ、より快適な住まい、窓環境は創ることは出来ない。
特に夏と冬の相反する窓効果は、窓の大小ではなく建築計画デザインに最も影響される。
冬の受熱と断熱、夏場の遮熱、春秋の爽風をより良く取り入れる穴であり、住まいにとっての自然環境との対話する窓であると考えるべきであろう。

窓プランをもっともっと考え、より良い住まいの環境デザインを創生しましょう。

 

最後に

ここでおまけAちゃんのトリビアを1つ。
「窓」は「窗」を略してできた形。象形文字に由来するとか。
元は「窗」の穴冠の下の部分「囱」だけで窓の形を象って(かたどって)いました。
その後これに穴を加えて「窗」とし、さらに変化して「窗」の下に心を加え、現在の「窓」になったようです。
「ム」は「公」を略したもの。漢字の成り立ちとして象形文字から変化していった過程で「ム」や「心」には意味はないのですが、是非とも建築計画では窓に対して一遍に偏らないよう(公平に)心を砕いてみてはいかがでしょうか。

 

以上、キャリア52年建築士の管見Vol.7を綴らせていただきました。
『リフォームで窓を大きく!より良い住まいの環境デザインへ』に関する記事をお時間を割いてここまでお読みくださり、ありがとうございました。
ご参考になれば幸いです。

 

お家のリフォーム・メンテナンスに関するお問い合わせは こちら

まずはお気軽にお問い合わせください。