スイコウBLOG
2022年07月13日

増築や二世帯を家族構成の変遷に伴って考えてみる

住宅購入者の分類

増築計画と二世帯についての考察の前に住宅購入者の分類をしたい

⑴独身で仕事を持つ人=Young professional

 →通常はマンション等の購入者が多い

 

⑵若い夫婦(共稼ぎではない・子供なし)=Young couple

 →資金的に余裕がない場合が多い

 

⑶夫婦とも仕事を持つ人(子供なし)=Career couple

 →仕事優先につき職住近接型住宅を求める

 都心回帰・利便性・ワークライフバランスを重視

 

⑷若い夫婦と小さい子供(1~2人)=Basic family

 →職場と子育て環境の両立=郊外型住宅を求めるケースが多い

 

⑸壮年(中年)夫婦と成長した子供2~3人=Move up family

 →持ち家あり、リフォームの時期 築20年以上

 

⑹離婚者と子供1~2人=Divorced family

 →通常持家所帯は少ない

 (※二世帯住宅の需要ありか?所謂実家の二世帯住宅化の可能性も)

 

⑺夫婦だけ(子供なし)=Move down

 →利便性又は田園生活への願望あり

 

⑻中老夫婦のみ(子供なし)=Never Nested

 →住まいへの願望希少・利便性と趣味の追求

 

⑼子供が独立し夫婦のみ=Empty nester

 →空き部屋あり・二世帯住宅への改修度あり

 

⑽退職した夫婦=Retired

 →所謂年金生活者・二世帯住宅への可能性あり

 

⑾三世代住宅=Full House

 →オールドファッション生活者・二世帯住宅への要求度は高いか?!

 

二世帯住宅への道標

二世帯住宅への道標は住宅購入者の中で、⑼子供達が独立した夫婦のみ世帯 及び、⑽退職した夫婦の世帯に於いてと、伝統的な⑾三世代住宅への回帰願望Familyに於いてあるのであろう。

Full House住宅とも云えよう。以上は住宅購入者分類よりの考察ではあるが、既存建物を二世帯住宅・又は三世代住宅のFull Houseにするには、本質的に従来住宅の建築構造的にスケルトンインフィル的建築計画がなされていない為、本質的に間仕切り及び設備などのリニューアルが難しい場合が殆どではないかと思われる。


今更ながらの事ではあるが、当初計画時よりの構造及び設備計画について、よりフレキシブルでサスティナビリティを考えられた住まい計画に基づいた住宅計画により、住まい創りがされている事が肝要である。

特に昨今の「長期優良住宅」又は「百年住宅」等の基準に於いては省エネルギー性・耐震性・劣化対策及び設備更新性等の配慮をするように求められているが、二世帯住宅及び三世代同居可能なための可変性は求められておらず長期に住み入る為の考え方が網羅されておらず、本質的に求められるべき改修改築の対処が不十分であり単なる強さ・省エネ等々基準あるのみにて長期的視野に於いての家族構成の変遷には対応されてはないように思われる。

 

又、現状に於いて二世帯住宅及びFull Houseと呼ぶべく三世代同居の住宅改修は構造及び設備システムが改築に対しての配慮が殆どなく、非常な困難を伴うことが多いようである。

それに改修のためのスペースが限られている為なかなかフレキシブルな計画が難しく限定的改修計画になりがちである。

これからの住宅に於いて求められる計画はスケルトン(構造)をテーマに長期間対応システムを設計時に対処しなければならない。

 

二世帯住宅と三世代同居

二世帯住宅と三世代同居は(=敢えてFull Houseと呼ぶ)、通常所謂老夫婦と若夫婦と子ども1~2,3人とのケースが多くあり、血族的に一人の非血族者の存在があることに多分に間違いはない。

「嫁姑問題」はまず馬が合うかどうかによる。以下省略とする。

二世帯住宅とは戸建ての住まいを分割して住まう事、つまりデュープレックス=棟割長屋とも云える。全ての設備に於いて一か所から二か所が必要となり元の住まいとは総じて変更せざるを得なくなる。

デュープレックス住宅にすれば嫁姑問題は多少なりとも緩和されるかもしれないが、そもそも元の住まいが殆ど対応不可ではないか?日本に於いての元(原)住宅を二世帯住宅化することは不可能と言っていい。

 

二世帯住宅化は所謂デュープレックスハウスとして新築すること以外にあり得ないと考えられる。既存戸建て住宅を2世帯にする事は、余程の土地及び住宅面積の広さが必要となる。

これらのことからの多くの既存住宅の二世帯住宅化より、三世代住宅として改修及び増築を考えるべきかと思われる。該当する可能性のある方々は、ぜひ楽しきフルハウスへの道を探して欲しい。

増築計画について

増築計画について、まず法律による制限がある。建ぺい率と容積率に違反しない事。増築可能な場合は、防火指定のない地域では10㎡以内の場合、申請許可は必要ない。
(注.違反してよいとの事ではない)

建ぺい率と容積率に対して又、防火指定のある場所では微かな増築でも申請許可が必要である。勿論建ぺい率と容積率の範囲と防火基準に沿った申請許可となる。

(東京23区に於いては殆ど防火指定の区域に入っている)

 

又、増築に於いて構造体により増築対処法が変わる。既存建物が木造の場合、木造の増築は比較的簡単であるが、プレハブなどの認定住宅の増築の場合構造的整合性の必要により対応処理に困難が伴う。


一般的にはハウスメーカーの認定住宅は対処がややこしくなることが多い。ハウスメーカー住宅は、住宅完成時に完結系としてあり、比較的増改築には適さない様に個人的には考えられる。
やはり在来的工法にて建築された住まいの場合、鉄筋造・木造等を問わずフレキシビリティーが高いように思われる。

以上、キャリア52年建築士の管見Vol.8を綴らせていただきました。

 

最後にもう一つ付記…

二世帯住宅・三世代同居のメリット・デメリットは、親世帯・子世帯でそれぞれ捉え方が変わるかもしれません。

【子育て・家事負担の軽減】

既に二世帯・三世代同居をしている共働き子持ち世帯の中には、親世帯と共に暮らしていれば頼る事も多いでしょう。

それは子世帯にとっては大なり小なりメリットとなりますが、まだまだ元気な親世帯にとっては負担を強いられるなどのデメリットともなりかねません。孫の成長を近くで見ることが、日常生活の良い刺激や元気の源になり幸せを感じる人もいれば、逆に負担に思う人もいます。

 

生きてきた時代背景や文化の違い・ライフスタイルや価値観の違いにより、掃除・洗濯・料理のやり方など、ひとつひとつが目についてしまうことで、小さな摩擦が起きる可能性があります。
小さな摩擦が大きなストレスとなり、参ってしまわないような生活スタイルを模索して、お互いを尊重しあえる関係性が大切と言えるでしょう。

 

【経済的負担の軽減】

親世帯・子世帯それぞれ別で建てることに比べると、共に建てた方が土地の購入費や建築費用を抑えることが出来ます。


また、ローンの折半、光熱費を抑えることができるなど、お互いのメリットとなる可能性は高いです。半面、親世帯が高齢になってきた場合など、子世帯の負担増という可能性など覚悟が必要となる場合もあるのではないでしょうか。


今現在だけではなく将来の事を踏まえて、事前の返済計画や負担割合などをよく話し合っておき、無理のない計画が大切になるでしょう。

 

【不慮の際や将来への安心感】

これは親世帯にとっては特に、病気や怪我の際の、独居の場合と同居の場合の安心感は比べ物にならないのではないでしょうか?

子世帯にとっても、子供の病気や怪我の際にいくつもの手があることは安心感に繋がります。

介護に関しても、子世帯が関わる場合に二世帯住宅や同居で見守る事と、遠距離で通いでの対応とでは大きな差があるように思います。あらゆる場合に備えて、二世帯同居解消後には賃貸に出せるようなデュープレックス住宅にして完全分離にするなども検討しておくと良いでしょう。

 

まとめ

核家族化した現代社会に於いては、「同居=息苦しい」イメージが拭えません。

しかし、これからの子世帯は夫婦共働きで子育てをすることが当たり前になり、生活空間をしっかり隔てた分離型の二世帯住宅や、共有型の二世帯住宅、融合型の三世代同居で、夫婦どちらかの両親が近くにいることが新たなスタンダードになる世の中に変わってくるかもしれません。

住宅購入者に於いては、自分たちのライフスタイルの変遷を事前に色々なパターンで考えておくことで、二世帯住宅や三世代同居、増築に限らず、子供の成長に伴う間取りの変更の可能性など、自らの生活環境の移り変わりに合った快適な住環境への近道となるのではないでしょうか?

 

今回も『増築や二世帯を家族構成の変遷に伴って考えてみる』に関する記事をお時間を割いてここまでお読みくださり、ありがとうございました。

ご参考になれば幸いです。

 

 

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