2022年08月22日

リフォームにおける耐用年数を建材やメンテナンスから解説【現役建築士】

構造別住宅の法定年数—国税庁による減価償却算定基準より

木造:22年

軽量鉄骨:27年 S造6㎜未満の鉄骨造

重量鉄骨:34年 S造6㎜以上の鉄骨造

ブロックレンガ造::38年

 

以上は国税庁による固定資産税の減価償却基準であり、各法定年数を経過すると原則税法上零になるとの計算値であり、実際の耐用年数との相違があります。

通常、世代の変化(世代交代)による耐用年数は30年程度であり、実情は平均的に26年とのデータがあります。ちなみに米国44年、英国75年とのデータがあります。

いずれにしても、基本的に日本の木造住宅の寿命が欧米に比べ1/2から1/3程度にて建て替えされているのが実情です。

米国の住宅は基本木質パネル化住宅「2×4 ツーバイフォー」であり、また英国他欧州各国の住宅は石造他重木造と呼ばれる住宅造りであり、最大の原因としては気候風土と住宅に対する考え方の違いが大きく、又長持ちさせるためのメンテナンス方法と気質の違いが日本とは違っているとも言えます。英国では古い家ほど価値があるとも考えられているようです。

今建築されている木造住宅の場合、住宅ローン年数はフラット35(35年ローン)基準の場合、国土交通省の期待耐用年数は50~60年程度とみなしており、劣化対策等級“3”の場合、75~90年としてあり、長期優良住宅は100年としてあります。ちなみに劣化対策等級には次の3段階の設定があります。

等級1:『1世代以上型住宅』

等級2:『2世代以上型住宅』

等級3:『3世代以上型住宅』

建築基準法上の対策「建基法」は、守るべく最低基準を表しています。

等級2・等級3の住宅の基準として、特に各部位の防腐・防蟻・防水・湿気・通風・換気などの基準がより細やかに規定されております。

等級1の場合の基準は構造に対する規定であり、構造に関しての等級1~3の違いはありません。住まいの長持対策の第一要件は湿気対策と言っても過言ではありません。

木材の寿命について

国産木材についてのみ、原則木材の樹齢により差があると言われております。通常木材の樹齢の2倍程度の寿命があるのではないかと考えられます。

また、樹齢数百年以上の大口径木の場合、伐採により2~300年後に一番の強度が出るとも言われ、ほぼ樹齢の2倍以上の寿命があるとの事です。

 

材種について

日桧、桧葉(ヒバ)、杉などが国産材として主に使用されています。日桧・ヒバは杉に比して強度・耐久性があり、値段も高く肌目も美しいと思います。

杉材の特性としては、時代背景的に室町時代における商品経済の発展と臨済禅より発生した茶の湯に於けるワビサビの美意識による杉材の持つ優しさと柔らかさが茶の湯の“美”にマッチしたものと考えられます。

以後、杉材は造作部材他天井材として使用され、現在の住宅では柱材などの使用が多く使われています。

また栂材も使用されてはいますが、流通量は少ないように思われます。

材質として無垢材と集成材があり、構造用途により使い分けされております。無垢材の場合、材種により強度に差があります。

成材の場合強度のバラつきはありませんが、接着剤による接合の為、接着剤の耐久性により寿命が変化するのではないかと考えられます。

最近では高層の建築に使用されています。言わば環境負荷の軽減の為と森林資源の保存の為の行いでしょう。

集成材の事を通常L.V.Lと呼んでおり、単板(薄板)を何枚も積み重ね接着したものです。

素材の材質により強度に差があり、また大口径及び長さも自由に作成可能な為、種々大規模建築に使用され、木材の持つ肌合いが優しく和みを感じる事が出来るようです。

以上木造住宅の素材たる木の事を述べてきました。

本題としてのリフォームにおける耐用年数について云えば、木造の使用方法と完成(竣工)時期により構造耐力に差があります。

1981年以前の耐震基準と以後の耐震基準に差があり、現行基準において、1981年以前の住宅の場合、大概耐震補強が必要となる場合が多いと考えられます。

しかし、耐震基準以前または以後においても耐震計画に基づいたプランが最も大事な事であり、新耐震基準はある種のレシピでありプランを含めた造り方により、良く出来たりまずくできたりします。

建築計画は十分考えた上で建築しなければなりません。

第一に考えなければならないのは定期的に住まいの状況を目視によるチェックをすることに尽きます

建物寿命を最も縮める原因は雨漏りと湿気であり木材他仕上げ材等はすべからく湿気によりカビ・腐朽菌または白蟻による食害で建物寿命が短くなります。

建物は可能な限り乾燥状態を保つことが重要です。また、建物周辺環境と敷地状況によっても耐用年数は変わります。

 

リフォーム後のメンテナンスチェックについての考え方

屋根・ストレート系表面劣化の補修は、15~20年毎に塗装リニューアル(メンテナンス)の必要性があります。

また葺き替え等根本的リフォームは約30年程度と考えられます。金属系屋根「ガルバニウム葺き」の場合、15~20年程度でメンテナンスチェックを行い、雨漏りなどの不備がなければ洗浄のみで済みます。

耐久・耐候性が高いのでメンテナンスは簡便に済む場合が多く、シングル葺きも30年程度は問題なく使用可能と考えられます。

また、葺き替えせずに重ね貼り可能である事が特徴と云えます。

瓦葺について、一概に瓦葺きと言っても素材により雑多にあります。

ここは伝統的な和瓦のメンテナンスについて述べます。和瓦にも二種類あり、釉薬瓦といぶし瓦とがあり、釉薬瓦は茶碗等と同じく焼き物であり表面のみ釉薬されており、裏側は焼地肌がでており中級品といった物でしょうが、いぶし瓦は伝統的な焼いぶし瓦であり、焼きむらは基本無く芯までいぶしの焼きが入っており本来の瓦とも云えます。

瓦のメンテナンスは殆どが棟瓦と熨斗と呼ばれる通常漆喰等の詰めた部位の剝落による詰め替えと、地震などによるズレ等に対する並べ替えが必要となります。瓦の割れ等がない場合、瓦そのものは寿命が長いものです。

次にベランダ等の防水については原則10年保証がありますので、防水そのものより下地等の歪み、あるいは腐蝕によりメンテナンスが必要となります。

雨漏りの原因による腐蝕があると考えられます。意外と雨漏りし易い箇所とも云えますので、良く留意してチェックすべきです。

外壁メンテについて、仕上げ種類としてモルタル系・サイディング系・金属系・タイル系または木製板張り系があります。特にメンテナンス上注意する外壁仕上げはモルタル系(湿式工法)仕上げ材となります。

ひび割れ(クラック)の状況により判断します。表面的クラック、下地まで到達したクラック、またモルタル等の浮き・剝落等がある場合木造内部まで腐食のおそれがあります。

速やかに対処しなければなりません。サイディング系乾式工法による仕上げ材の場合、継ぎ目のシーリング劣化のメンテナンスが重要で速やかに打ち替え施工をしなければ内部まで腐食が発生します。

湿気等も内部に含まれる為、白蟻による食害が発生し、腐朽菌による木材の劣化が生じる事になります。

シーリングの寿命は部位によって差がありますが10年程度が一つの目安であり、弾力性が無くなっている場合や、ひび割れが生じている場合には処置が必要となります。

特に留意したい金属系も同様にシーリングと錆に対しての処置の必要性があります。

タイル系外壁の場合、白華現象と呼ばれるセメントと水の化合による炭酸カルシウムの発生により、セメントが中性化しタイルの剥離脱落のおそれと膨らみによる脱落なども生じる場合があります。

湿式工法の場合、打診する事により誰でも調査可能です。いずれにしても外壁面のメンテナンスは内部構造体への影響が大きく特に需要チェックポイントです。

内装メンテについては、雨漏り等の部位がない限り汚れたらメンテナンス修理をする事になるでしょう。

但し、湿気や通風が不足の場合、カビや腐朽菌の発生があるので、乾燥と通気に留意することが必要です。

1階床については、床下の湿気対策が最も重要であり床下の乾燥こそがメンテナンスフリーの原則です。

床下の湿気があると白蟻・カビ・腐朽菌等があっという間に発生し、住まいの基礎が損なわれ重大な結果をもたらす事になります。

設備機器の寿命については、ある程度自分自身でメンテナンスチェックをする事が必要です。

■レンジ・コンロ等の加熱機器:10~20年程度

■食洗機:10~20年程度

■化粧台:15~25年程度

■便器:20~30年程度

■ユニットバス:20~30年程度

■給湯器:7~15年程度

■水栓やパッキン等:チェックを5年程度で行う・寿命としては10~20年程度

 

設備機器のお取替えやリフォームは、調子が悪くなったり壊れたりしてから慌てて連絡を受け修理や交換を検討する事が多くあります。

耐用年数を超えた製品をお使いの場合、補修部品等が無く修理が出来ない可能性が高くなり、お取替えを選択せざるを得ない事になります。

ところが最近は、コロナ禍によるロックダウンの影響と、ウクライナ情勢などの世界的な規模での影響で半導体や機器内部の部品、木材の調達等が難しい状況があります。

特に給湯器に関しては未だに発注から半年待ちの可能性もあり、以前は壊れてしまっても1週間ほどで取替えできていたところが、長期間お待ちいただく可能性がある状況が続いています。

その他にも以前に比べてメーカーからの納品が大幅に遅れている物が多数あります。耐用年数を20年以上超えて使用されている製品は、性能も格段に向上し、利便性もアップしている事が期待できます。

ぜひ一度お家全体のチェックを行ってみることをお勧めします。

メンテナンスして大切に使い、耐用年数を見据えた計画的なリフォームを。

 

以上、キャリア52年建築士の管見Vol.10を綴らせていただきました。

『リフォームにおける耐用年数』に関する記事を、お時間を割いてここまでお読みくださり、ありがとうございました。

ご参考になれば幸いです。

 

お家のリフォーム・メンテナンスに関するお問い合わせは⇒⇒こちら

お家の状態を現場調査させていただいた上、お見積りをさせていただきます。

まずはお気軽にお問い合わせください。